税務調査をシンプルに考える(7)税務署の調査と国税局の調査は、何が違うのか①
今回は、税務署の調査と国税局の調査の違いについて、私の経験から書いてみます。話すと長くなるので、2〜3回に分けてお届けします。第1回は、「規模」と「調査のやり方」の違いです。
税務署に6年、国税局に5年
私は、国税の職員として約11年、そのうち税務署に6年、国税局に5年いました。法人の調査は、税務署で約5年、国税局の調査部で3年やりました。両方を経験したので、その違いを肌で感じています。
まず、調査の対象になる法人の規模が違う
いちばん大きな違いは、法人の規模です。
国税局が所管する法人は、基本的に資本金1億円以上の法人です。ただし、1億円以上なら必ず国税局の所管になるわけではありません。売上高、事業の展開の仕方、拠点の多さなどを総合的に見て、国税局の所管かどうかが決まります。国税局の所管以外の法人は、すべて税務署の所管です。
国税局の所管になった会社には、「貴社は国税局の所管になりました」という通知が届きます。私も一時期、その処理の仕事をしていました。逆に、資本金が1億円に満たなくても、事業の規模が大きければ、完全に国税局の所管になることがあります。たとえば、資本金が数千万円でも、売上が100億円に達しているような会社です。一概には言えませんが、国税局の所管か、税務署の所管かで、調査をする人も、調査のやり方も、本当に違うと感じました。
税務署の調査は「一人で、3日間」
税務署の調査は、基本的に調査官が一人で行きます。
対象は、いわゆる一般の調査で、売上が数千万円から、億単位の一桁くらいまでの会社です。その上のランクに、「特管」と呼ばれる部門があり、売上が10億円以上の、国税局に行かない規模の会社を担当します。
期間は、だいたい3日間です。会社にお邪魔して、帳簿をめくる。これが、税務署の一般的な調査のイメージです。
しかも、調査の繁忙期の9月、10月は、1週間に1件のペースで調査に行きます。月曜から水曜に会社へ行き、木曜と金曜に検討をして、翌週にはまた新しい調査が入る。これは、正直しんどいです。頭の切り替えも大変ですし、準備もあります。調査は、何か月もかかるものなので、仕掛かりの案件も、どんどん積み上がっていきます。
こうした調査を担当するのは、北海道では、20代前半から中盤くらいの若手が多いと思います。
国税局の調査は「チームで、2週間以上」
一方、国税局の調査は、長いです。
最低でも2人、たいていは、3〜4人のチームで臨みます。
その中に「主担当」が一人いて、その人が中心になって、どこを見るか、準備や方向性、会社さんとの連絡を行います。
期間は、最低でも2週間です。長いですよね。
規模が違うと、調べ方が変わる
規模が大きいので、調べ方も大きく変わります。
たとえば、売上3億円の建設業の下請けの会社なら、総勘定元帳は、1日あれば全部めくれます。紙でもデータでも、見切れる量です。しかし、売上が50億円になると、全部を見ることは、さすがにできません。
最近は、税務署の調査でもデータを事前にもらうという話もよく聞きます。
私が国税局の調査をしていた頃は、すべての事案で、事前に会社や顧問税理士の了解をもらい、仕訳のCSVデータをいただいていました。これをもらわなければ、仕事になりません。何もないところから全部を見ていたら、2週間では、到底終わらないからです。
だからこそ、ポイントを絞って見る必要があります。全部を見切れることは、ほぼありません。
規模が大きいほど、糸口を見つけるのは難しい
税務署の調査は、言ってしまえば、間違いが見つかりやすい調査です。ちょっとしたミスは必ず起きますし、グレーな経費も、それなりにあります。
一方、国税局の所管になるような会社には、きちんと経理部があります。経費を一つ払うにも、事前の決裁が必要で、内部の牽制や社内ルールがしっかりしています。ですから、グレーな経費は、なかなか出てきません。
つまり、調査の「糸口」を見つけるのが、むちゃくちゃ難しいのです。
やり方は、いろいろあります。一つの科目、勘定、金額、現場を決めて、ひたすら掘り下げていく。一つ掘るのに、1日から2日かかることもあります。ダメなら、また次の穴を掘る。あるいは、全体を俯瞰して、客観的に、まんべんなく見ていく。そうしたやり方がありますが、どれも、一筋縄ではいきません。
不正を狙うには、ガッツと根性がいる
これまで書いてきたとおり、国税は、不正を狙っていきます。ただ、国税局の所管の会社で、不正を見つけるのは、もう一段難しいです。
単純な売上除外や、架空の経費のようなものは、基本的にありません。それでも、見るところは、普通の調査と同じです。基本は、同じなのです。
私の実感では、国税局の調査で不正を取りにいくのは、かなりのガッツと根性が必要でした。会社の規模が大きく、組織として動いているため、一つの経理処理を取り上げて、「これは重加算税の対象になります」と納得してもらうのは、とても難しいからです。どういう課税要件を経て、どこに重加算税の根拠があるのか。それを、きちんと立証して説明しなければ、相手が認めることは、ありません。
次回に続きます
今回は、規模と、調査のやり方の違いを書きました。次回は、続きをお話しします。
