2026/11/5

税務調査をシンプルに考える(9)税務署の調査と国税局の調査は、何が違うのか③ スコップで掘る深さが違う

前回は、国税局の調査部での3年間を書き、「帳簿の先にある事実を見る」という共通点で締めくくりました。今回は、同じ「事実を見る」でも、税務署の調査では、それがどう違ってくるのかをお話しします。

税務署の調査は、掘る深さが浅い

税務署の調査は、国税局の調査に比べると、掘る深さが浅いです。規模が小さいので、課税の論点もシンプルなケースが多いのです。

たとえば、売上5億円くらいの建設業があるとします。ある外注先に絞って見れば、その外注費がどの売上に対応しているのか、その現場の粗利がどのくらいなのかは、比較的簡単に出てきます。調査官がスコップを持っているとすれば、掘ればすぐに、ある程度の結論が出てくる。そういうイメージです。

国税局の調査は、規模が10倍になる

国税局の調査の対象は、規模が大きくなります。たとえば、売上が50億円の建設会社なら、先ほどの例の10倍です。工事台帳から、一つひとつの現場を検討していくのも、簡単ではありません。

しかも、大きな会社は、協力会社の選び方も、きちんとしています。外注先を選ぶ段階で、取引の相手としてふさわしいかどうかを見ているので、一般に、あやしい会社に仕事を出すことは多くありません。

税務署の調査では、「杓子定規ではない何か」が動いていることも

一方、税務署の所管の建設会社には、下請けの、さらに下請けのような会社が多くあります。人手を確保しなければならない場面もあります。

こうした現場では、教科書どおりの処理だけでは、動いていないこともあるのではないか。私は、税務署の調査をしているときに、そう感じることがありました。具体的に何が、とは言い切れませんが、杓子定規ではない何かが働いている、という感覚です。

結局、会社と会社の間の力関係も、無関係ではないと思います。

私自身も、事業を始めてみて、あらためて実感しました。得意先から頼まれたことは、できれば応えたい。仕事を取ることは、本当に簡単ではありません。だから、仕事を取るために、何をするのか。その過程で、税務の面では正しくない方法に傾いてしまうことが、ゼロではないと思うのです。もちろん、業種や会社によって、まったく違います。ただ、立場の弱い会社ほど、現実の商慣習と、税務上の正しさのあいだで、板挟みになりやすい面はあると思います。(あくまで一般論で、特定の業種や会社を指しているわけではありません。)

「サラリーマン対サラリーマン」と「社長の財布」

もう一つ、大きな違いがあります。それは、調査を受ける側の立場です。

国税局の所管の会社で、調査に対応してくださるのは、基本的にはサラリーマンの方です。私も、税務署でも国税局でも、サラリーマンでした。ですから、ある意味で、サラリーマンとサラリーマンの話になります。

たとえば、経理処理について、見解の相違があり、課税になったとします。追徴税額が出たとしても、対応してくれた経理の担当の方の懐が、直接痛むわけではありません。

しかし、税務署の所管の会社では、事情が違います。課税は、そのまま、社長の財布に響きます。場合によっては、課税によって、会社が傾いてしまうこともあります。

だからこそ、「どこに課税すべきか」を考える

だからこそ、調査官には、よく考えて調査をしてほしいと思っています。

本当に課税すべきところは、どこなのか。その見極めをきちんとして、そこに課税をする。これは、「手加減をする」という意味ではありません。細かいミスを数えるのではなく、課税すべき本丸を見極めて、そこに力を使うべきだ、ということです。第2回で書いた、「調査と監査は違う」という話と、同じところにつながっています。

おわりに

税務署の調査と国税局の調査は、規模、チーム、期間、データの扱い方、そして、調査を受ける側の立場まで、まったく違います。ただ、どちらにも共通するのは、帳簿の先にある事実を見て、課税すべきところを見極める、ということです。

この、「どこに課税すべきか」を見極める視点は、今、税理士としてお客様の側に立つときにも、とても役に立っています。

① 税務顧問:調査に強く、経営の相談相手にもなる

一つは、税務顧問です。

国税で約11年、税務署と国税局の両方で調査をしてきた経験から、調査官が見るところ、気にするところが分かります。だからこそ、日頃から、調査に耐えられる決算を、お客様と一緒につくっていくことができます。

ただ、私が目指しているのは、税務調査対策だけではありません。帳簿は過去の数字です。その数字をもとに、これからの経営をどう舵取りしていくか。社長と一緒に考える、「社外CFO」のような存在でありたいと思っています。

税務調査に不安がある方、今の税理士に、調査の相談がしにくい方、決算の数字を、経営に活かしたい方は、ぜひ一度、ご相談ください。

② 税務調査の裏方:税理士の先生方を、後ろから支える

もう一つは、「税務調査の裏方」という取り組みです。

税務調査は、税理士の先生方にとっても、神経を使う場面です。顧問先に調査が入ったとき、論点の整理や、調査官とのやりとりで、迷うことがあると思います。そんなとき、元調査官としての経験をもとに、税理士の先生方を、後ろから支える。これが「税務調査の裏方」です。

https://zeimu-urakata.jp/

私が、(4)でお話しした、納税者と国税の「架け橋」になりたい、というのは、この形でも実現していきたいと考えています。

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